来迎和讃

帰命きみょう頂礼ちょうらい　弥陀みだ如来にょらい

１　摂取せっしゅ不捨ふしゃの光明こうみょうは　念ねんずる所ところを照てらすなり
　　観音かんのん勢至せいしの来迎らいこうは　声こえを尋たずねて迎むこうなり

２　娑婆しゃば界かいをば厭いとうべし　厭いとわば苦界くかいを渡わたりなん
　　安養あんにょう界かいをば願ねごうべし　願ねがわば浄土じょうどに生うまるべし

３　草くさの庵いおりは静しずかにて　八功はっく徳池どくちに心こころすみ
　　夕ゆうべの嵐あらし音おとなくて　七重しちじゅう宝樹ほうじゅに渡わたる也なり

４　臨命終りんみょうじゅうの時ときいたり　正念しょうねん違たがわで西にしにむき
　　頭こうべを傾かたむけ手てを合あわせ　いよいよ浄土じょうどを欣求ごんぐせん

５　聞きけば西方界さいほうかいの空そら　伎楽ぎがく歌詠かえいほのかなり
　　見みれば緑みどりの山やまの端はに　光雲こううん遥はるかかに輝かがやけり

６　この時とき身心しんじん安やすくして　念仏ねんぶつ三昧ざんまい現前げんぜんし
　　毫光ごうこう我身わがみを照てらし来きて　無始むしの罪障ざいしょう消滅しょうめつす

７　光雲こううん漸ようやく近ちかづきて　瞻仰せんごうすれば弥陀みだ如来にょらい
　　相好そうごう円満えんまんし給たまいて　金山王こんせんのうの如ごとくなり

８　鳥瑟うしつも高たかく現あらわれて　晴はれのみ空そらに緑みどりなり
　　白毫びゃくごう右みぎに旋めぐりては　眉まゆの間あいだに輝かがやけり

９　観音かんのん勢至せいし諸しょ菩薩埵ぼさった　光ひかりの中なかに充満みちみてり
　　各各おのおの威徳いとくあらわれて　声声こえごえ行者ぎょうじゃを誉ほめ給たもう

１０　昔むかしは大悲だいひの御利益ごりやくを　僅わずかに伝つたえ聞ききしかど
　　　今いまは阿弥陀あみだの引接いんじょうを　心こころのままに蒙こうむれり

１１　冀こいねがわくは弥陀みだ世尊せそん　行者ぎょうじゃの誓ちかいを愍念みんねんし
　　　大悲だいひ誓願せいがんあやまたず　来迎らいこう引接いんじょうたれたまえ

南無阿弥陀仏　阿弥陀仏　南無阿弥陀仏　阿弥陀仏

恵心僧都　御作
作曲：松濤　基